ハッチャがスゴイ理由
2005-10-08 Sat 06:50

【JACH'A MALLKU / "El Arte de … JACH'A MALLKU"】(1989)

ハッチャ・マリュクの2ndアルバム。

・・・でありながら、すでにジャケット裏面にはディスコ・デ・プラティノ(プラチナ・ディスク)を受賞した写真が。
1stアルバム"YOTALEN~A"がいかに反響を呼んだかがわかるというものだ。

現在残っているメンバーはヴォーカルのフランツ・チュキミアのみになってしまったが、なにがスゴイかって独特のハッチャ・サウンドに変化がない点だ。

たとえば、一時ボリビア・ネオ・フォルクローレにおけるスタンダードサウンドになった感のあるカルカスでさえ、前期・中期・後期とサウンドが全く違う。
ハッチャ・マリュクのアルバムはメンバーがかなり移動しているのにもかかわらず、原則的にみな「ハッチャ」な感じ(?)がするのだ。※1

繊細でありながら、アイマラっぽいリズムを前面に押し出す点は典型的なラ・パス・サウンド。
ところがサウンド自体はエッジのたった音ではなく、洗練されている。
しかしそれでいてコテコテなのだ(文章で書くと全く意味不明な表現だが、彼らのサウンドをご存じの方は納得していただけるであろう)。

80年代後半というと、カルカスのあまりのカリスマぶりにネオフォルクローレ界はことごとくカルカス・スタイルのメロディ、アレンジ、ビジュアル、リズムにあふれかえっていた時期だ。
我々リスナー側もそんな状況に最後は食傷気味になりながらも、それを当然のように考えていた。

そんな中でのハッチャ・マリュクの登場。
ビクトル・フェレルのかっこいいギター、着実にアイマライズムを伝える自己主張の強いフルビオ・バリョンのボンボ、ロドリゴ・カリアーガによるケーナの強いフレージングから生み出されるハッチャ・マリュクにしかできないサウンドには驚いたものだ※2

第一、これだけ人気を誇ったにもかかわらず、模倣者が出てこないのがスゴイ!
いや、模倣しているつもりでも、できないんだろうなあ (ハッチャ版の"SI TE VAS"をコピーしている新人コンフントもあったし)
アルバム8曲目"TIERRA DE CONDORES"は、7曲目までのリズミックなナンバー(6曲目クエッカ、7曲目カランペアードとコテコテだ)に慣れた耳に解放感を与える力強いのびのあるケーナと勢いのあるチャランゴが気持ちいい。いかにもハッチャ・マリュクらしいトローテ。ギターのビクトル・フェレルによる名曲だ※3

もちろん1曲目から曲のアレンジや配列をよく考えているアルバムだが、特に7曲目~10曲目までのコンビネーションは見事というより他にない。

芸術肌のシェフによるよく計算されたフルコース、大変おいしくいただきました。

【注】
※1
しかもバンドリーダーは存在しないという。本当なのか?(後のアルバムではフルビオ・バリョンがディレクトールと記述されていたりするのだが…。)
※2
ビクトル・フェレル(G)エドウィン・ロウェルト(ビエントス)、フルビオ・バリョン(ペルクシオン)…これだけ見ただけでもルミジャクタやマリュク・デ・ロス・アンデスのメンバーがかぶっているにもかかわらず、コンセプトが違えば、これだけ全くイメージの異なるグループになるという好例だろう。
※3
ハッチャ・マリュクのレコーディングでは、フシオン系のレコーディングと違ってハッチャ・サウンドを優先するサウル・カジェーハス(チャランゴ)だが、この曲では存分にサウル節を発揮している。



●"Tierra de Condores"

【アルバム・データ】
<LP>
JACH'A MALLKU / "El Arte de … JACH'A MALLKU"
IBLP-30.019 ( 1989 )
INBOFON (BOLIVIA)

1 VERSOS DE BETANZOS (betancen~o)
2 MI NOSTALGIA (cancion)
3 COCA Y CAFE (saya)
4 NO VOLVERE A QUERER (taquirari)
5 SI TE VAS (cancion)
6 MANANTIAL (cueca)
7 DONATA (hunan~o)
8 TIERRA DE CONDORES (trote)
9 HAY AMOR (pasacalle)
10 ILUSIONES HERIDA (cancion)

●残念ながらハッチャ・マリュクの初期の4枚のLPはCD化されていない。

●ベスト盤がボリビア本国とイギリスのTUMIレーベルでそれぞれ編集されているので、一部の曲は聴ける。
ただし、ボリビアはひたすらダンサブル路線、イギリスはひたすらインスト路線で同じような傾向の曲を延々ぶち込むだけの編集。
どっちにしろ聴いている最中にゲップが出る。お薦めできない。

●「ベスト盤編集におけるボリビアとイギリスの傾向比較」なんてタイトルで比較文化論の論文でもかきたい御仁には2枚のベスト盤を両方聴いてみることを強くプッシュする。




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