へたくそ? だから何?…グルーポ・ウマラ
2006-08-20 Sun 22:01

【Grupo UMALA / VOLVERE】(1992)

もうかれこれ10年はたったと思う。
そろそろ言ってもいいだろう。
ある御仁がビデオを見ながら
「ウマラって本当へたくそだな。日本人の方がよっぽどうまい」
と言ったのをよく覚えている。

当時、その「へたくそ」なウマラのLPにはまっていたのが、何を隠そうこの私だ。
「何だと、この野郎」
「この野郎とは何だ、サルモネラ菌め」
「うるせーお前の母ちゃんデベソ」と低次元の罵り合いになり、
相手を鉄弦チャランゴで15回殴打し※1、全治9ヶ月の怪我を負わせてしまった



…というのはウソ。
本当のところは(なるほど。そういう見方もあるか)とちょっとショックだった。

確かに日本人は、何するにしても器用だよ。うまいよ。巧い。巧みだね。匠十段だ。※2
だって我々は、お箸でご飯粒を一粒ずつ持てるんだからね!(←?)※3
でも「俺たちの方がうまい」だけで威張れるのか

Grupo UMALA
今まで紹介してきたいろいろなアーティストのように、
新しい可能性を開いたとか、芸術的な完成度のアルバムを作ったとか、そういう特長は皆無である。
しょせん、私が今までのアルバム紹介で罵詈雑言を浴びせかけてきた「コチャバンバ系ライク・カルカス」なコンフントにすぎない。

しかも、ほかのグループがカルカスの洗練さをこぞって身につけ、
女の子ファンを身悶えさせるようなヴォーカル、アレンジ、メロディを競った時期に
それもせず(できず?)、力の限り歌うだけ演奏するだけ踊るだけ(?)。
いや、踊っているところは見たことないけど、絶対レコーディング中にスタジオで踊ってるって!
…と、そう思わせるようなノリ重視の演奏。
洗練性かけらもない
繊細さなんか、くそ喰らえ
お前ら本当にカルカスの模倣、パクリ、ライク・カルカスとしての自覚があるのか!といいたくなるような男臭さだ。

そう。
うまいだけがすべてじゃない。
こんな荒削りで、繊細さのかけらもない、だからこそカッコいい音楽なんてボリビア人にしか演奏できないじゃないか!

「カルロス・サンタナなんて、さほどテクがあるわけじゃないんですよ。ニール・ショーンの方が遥かにうまい」なんて、
さかしらげに説いている人を見たことがあるが、「だから何よ」と言いたい。
じゃあ、いまだに多くの人々がサンタナのギターに心を動かすのを君はどう思うのか。※4

「カブールなんか、そんなにテクニシャンじゃないですよ」なんて、
したり顔でいう人がいるらしいが、「だから何だ」と問いたい。
じゃあ、あの恐ろしいまでの「俺節」を超越し、君は「自分だけの音楽」を創造できるのか。

そう。
テクニックは自分が表現したいものを伝えるのに絶対必要な要素ではある。それは事実だ。
しかし一番大切なのは「表現すべきもの」を持っているかどうかであって、
テクニックはその表現のための手段にすぎないということだ。

いろんな意味でボリビアまるだしのこのLP。
この荒削りなノリとカッコよさの追求は、むしろ初期カルカスの正統な継承者とは言えまいか。
世間ではいかに評価されなくとも、私はこのアルバムを心からカッコいいと思うぜ!




いや、どう考えても、彼ら「何かを表現したい」って柄じゃないし、
そういう音楽じゃないような気もするけど(笑) ※5


●"volvere" ……この際、「なぜこんな画面なのか」には目を瞑ってもらおう。

【注】
※1 
弦が鉄製のチャランゴ。楽器。鈍器ではないし、武器としても使えない。

※2 
いやあ、あんなハンバーガー食ったことないよ。バンズもきちんと焼いてあるし、アボカドもうまいうまい。

※3 
最近の生徒の箸使いを見ていると、まともに箸を使えるのはクラスに1人か2人くらいだ。鉛筆の握り方も同様。スゴい時代がきたものだ。

※4 
カルロス・サンタナは「サンタナ」のリーダーでギタリスト(「風は歌い、野獣は叫ぶ…サンタナ」の項を参照)。ニール・ショーンは3rdアルバムに参入した超絶天才ギタリスト。4thアルバム「キャラバンサライ」を制作中にカルロスのヒンズー教への偏重ぶりなどが原因でバンドが分裂。ニール・ショーンは脱退して後、ジャーニーを結成した。

※5 
今までご紹介してきた「名盤」のほとんどは、アーティストがLPやCDという枠で意識的になにがしかを表現しようとしたものが中心だ。しかし、ウマラの場合はカルカス・スタイルという洗練性を追求するジャンルでありながら、
「無意識に」地金がでているだけ(笑)でも、だからこそボリビア人らしさが出ていて、イイカンジなのである。

【アルバム・データ】
<LP>
"Grupo UMALA / VOLVERE" (1992)
BO/LRL1659 Lauro Rcords (Bolivia)

1 VOLVERE (tinku)
2 EN TU AUCENCIA (cueca)
3 A LA FIESTA (huayn~o)
4 TU SILUETA (chuntunqui)
5 DESPENDIDA (tonada-ronda)
6 A DONDE VAS CORAZON (taquirari)
7 KJAWARIWAY (tinku)
8 MORENA KOLLA (morenada)
9 YAMPARENITA (huayn~o)
10 BOQUITA DE MIEL (saya)
11 ARI CARAY (tinku)
12 YAYAKARWI (trote)
●CDになるわけない…。


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