ソレダー変身!
2008-06-09 Mon 01:11

【Soledad / "Yo Si Quiero A Mi Pais" 】(1999)

いや、ほしのあきは別だが。
日本のアイドルって、ある年齢になるとあわててイメチェンを図るではないか。
「カワイイ」を売りにする限界を見越して次の戦略に出るわけだ。

ショートからロングへ。
かわいい水着から黒い下着へ。
すっぴんからデラべっぴんへ。
ん?
あわわわ。

で、大抵、「イメージが違う」と旧来のファンはがっかり。
で、大抵、新規開拓のファンも獲得できず。
で、大抵、……むにゃむにゃ。
アイドルが生き残りをかけて行うイメチェンというのはなかなか難しい。

さて、アルゼンチン・フォルクローレ界の御大をも嫉妬させた※1国民的フォルクローレアイドル、ソレダー Soledad にもイメチェンの時があった。

●羽化する覚悟

「はっ、気付いたらあたしももう19歳。いつまでも、ポンチョを振り回してチャカレーラばっかり飛び跳ねて歌うというわけにもいかないね。そろそろイメチェンしよっかな」(←想像

ということでジャケットからしてぐっとオトナになったアルバム。それが "Yo Si Quiero A Mi Pais" なのである。

しかし、ソレダーのイメチェンはスゴいことになってしまう。
彼女はここで名盤をひねり出してしまうのだ。

96年に16歳でデビュー、チャカレーラなどパンパ系の踊れるリズムをアップテンポで歌い、伴奏はエレアコ限定というスタイルでアルゼンチンに爆発的な社会現象まで巻き起こした彼女。多くのアーティストが彼女に倣って新スタイルのアルバムをつくり、フォルクローレが突如大ブームに沸いたのを見れば、その影響力は一目瞭然だ。しかし、彼女はここで自分が作ったいわば「ソレダースタイル」とでも言うべき音楽性を自縄自縛の元凶と見なして壊してしまうのだ。

自分の成功したスタイルを捨て去ることがどれだけ大変なことかわかるだろうか。
円谷プロが「ウルトラマン」の版権を捨てちゃうのと同じようなことである。
え、ちがう?
じゃあ、当たった万馬券を捨てちゃうのと同じようなことだ。
え、これもちがうの?

●ドラマチックなわかりやすいサウンドへ

ま、何はともあれ、このアルバムにはサウンドスタイルに大きな変化がある。
その象徴ともいえるのが使用されるギターの違いだ。
フォルクローレの埃臭いイメージを払拭し、若くて元気のいい新しいフォルクローレを創造するためだったのだろう。それまでの彼女のギター伴奏には、エレアコが使用されていた。しかし、このアルバムでは平板なサウンドになりやすいエレアコを一切封印。すべてのギターがアンプラグドなのだ。表情豊かで厚みのある生音は「ホンモノ」サウンドのイメージづくりの大前提。

さらに、今までチャカレーラ一辺倒だったリズムを大幅に解禁。ワイニョなどの山岳系リズムカンドンベのメドレーなどを加えてアルバム全体に変化をつけるのだ。また、楽器の点でもベースやキーボードはもちろん、今まで一切使用したことのないサンポーニャ・チャランゴなどのアンデス楽器やトランペット・トロンボーンなどのラッパ隊などを加えるなどして1曲1曲に個性を与えている。完全に「ラテンポップス」と理解することも可能なアルバムなのだ。

アルバムタイトル曲のプロモーション・ビデオを見てごらん。


●ソレダーの「ジョ・シ・キエロ・ア・ミ・パイス」

今までの彼女のアルバムになかった精神性やオトナの彼女の顔が魅力たっぷりに伝わってくる。

この目論みは成功し、彼女のアルバムはこれ以降、表現の幅や可能性が大きく広がった。

確かに、以前のアルバムはアルゼンチンの人々のハートをがっちりつかむアレンジとプレイであり、彼女の名を歴史に刻むものではあった。しかし、アルゼンチン人にそれだけ特化されてしまった音楽というものは、なかなかアルゼンチン以外の人々には伝わりにくいものなのである。ブエノスの人々がいくら彼女を最高のポップス歌手と考えていても、アルバム1枚丸ごとチャカレーラ系というのは一般的な外国人にとっては難解な「民族音楽」歌手以外の何でもない。

このアルバムは、イメチェンを好機ととらえ、世界に通用する音楽・普遍的な音楽をつくろうというプラス思考が生んだ傑作なのである。※2

よ~し、おじさんも明日からイメチェンを








……って何を。

【注】
※1 
「ソレダー現象」とまで言われる社会現象のまっただ中、アルゼンチン・フォルクローレ界のゴッドファーザーならぬマザー、メルセデ○・ソー○が「ポンチョを振り回すようなものを私はフォルクローレとは認めない」と発言したとか。ユパンキを尊敬して斜陽のフォルクローレ界に飛び込んだ16歳の女の子にいう言葉か。恐ろしい。

※2
ちなみにこのアルバムのプロデューサには、財を惜しまなかったsonyによって最適な人物が選ばれた。ラテンポップスのヒットメーカーでありながら、フォルクローレに理解のある外国人が選ばれた。マイアミ・サウンドマシーンのエミリオ・エステファンである。
このアルバムは事実上、グロリア・エステファンを世に送り出したエミリオのアルバムと言っても言い過ぎではない。

【アルバム・データ】
<CD>
"Soledad / Yo Si Quiero A Mi Pais" (1999)
2-484993 COLUMBIA Sony music enterteinment (Argentina)
1. Yo Si Quiero A Mi Pais
2 . El Bahiano
3. Como Sera
4. Mi Consejo
5. Luna Mia
6. Mi Bien
7. Amarraditos
8. Corazon Americano
9. Un Amigo,Una Flor, Una Estrella
10. De La Mano
11. El Humahuaquen~o
12. Popurri Candombes

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