ボンボとカホンの皇帝!ミニーノ・ガライ
2006-07-26 Wed 23:28


【Minino Garay y los tambores del sur 】(2003)

10年くらい前だったか、DIAMANTESのコンサート。
6人くらいで男性メンバー揃ってのカホン演奏。
大変な興奮だった。
脳から背中にかけて電流が「ビビッ」て走ったね。

最近ではアルゼンチンのソレダー
デビュー10周年記念ライブDVD『OBRAS』。
全員ガウチョ姿の集団「シマロン」によるボンボとタップをバックにしたがえ、シルビオ・ロペスが小粋でかっこいいボンボのソロ・プレイ。
めちゃクール
まるで大江戸助六太鼓秩父屋台囃子かというカッコ良さ。※1

ネオ・フォルクローレの魅力の一つは、多彩なリズムでもあるわけだが、そのリズムを効果的に見せようとする、こうした打撃系(?)アレンジが全く見られなかったのも事実。
ペルーあたりから、カホンを中心としたカッコイイ「打撃系グループ」が出てくれないかなー、なんて期待する毎日だったのである。

そんな中、ついに登場した。
アルゼンチン※2ミニーノ・ガライだ。

今、凄いことになっているアルゼンチンの音楽シーン。いわゆる「アルゼンチン音響派」からフォルクローレ界に至るまで、次々と新しい動きが起こっている。
その中から登場したワクワクするようなこのサウンド。
ベースはフォルクローレ。
ルーツミュージック。
しかし、1曲目の歌詞にも見られるように、汎アメリカ的なアプローチによるルーツミュージックといっていい。
もちろん、汎アメリカ的なフォルクローレ・サウンドをつくろうという動きは昔からあった。
例えば、チリのキラパジュンやインティ・イジマニ。
彼らのサウンドが、ボリビア山岳地方のフォルクローレ、ペルーのブラックミュージック、中米・カリブにいたるまで網羅していたのはご存じの通り。
しかし、かつてのそういうアプローチが、70年代の人民連合的な政治志向や精神を汲んでいたのに対し、ミニーノ・ガライは純粋にサウンド自体を楽しんでいるように見える。

ミニーノ・ガライ率いるバンドの名前 (los tambores del sur =「南の太鼓たち」)を見るまでもなく、今回のサウンドづくりはリズムを重視した作りになっているのだ。
カホンボンボを中心に、自国のチャカレーラやガトはもちろん、カリブのリズムやカルナバルやバルスっぽいリズムなど、盛りだくさん。
ジャズやタンゴの要素も加え、シビレるようなジャムセッションまである。

しかし、大事なのは、それらの多様な要素が「マネ」ではなく、「ミニーノ・ガライのサウンド」になっちゃっている点だ。

根無し草でなく、ルーツをきちんと抱え、かといって偏狭なナショナリズムに陥らず、かといってモノマネになるのでもなく、自分で咀嚼した彼だけのオリジナルな音楽。
まるで日本のカレーライス(笑)。※3

こういう音楽をつくれたら幸せだよなあ。※4


●CARIBE


●CHACARERA DEL VIOLIN
【注】
※1
和太鼓はCDではなく、絶対生を聴こう。耳なんて器官に頼らず、「体全体で音を聴く」快感に目覚めること請け合い。そのためには出来るだけ近くで聴くこと!
※2
フランス在住。グラミー・シンガー、ディー・ディー・ブリッジウォーターのパーカッショニストとして何度か来日している。
※3
「日本のカレーライス」については、森枝卓士『カレーライスと日本人』講談社現代新書(1989)、小菅桂子『カレーライスの誕生』講談社選書メチエ(2002)をお薦めしたい。
※4
2ndアルバム"kilombo" は、特に幸せでもないなあ。


【アルバム・データ】
<CD>
"Minino Garay y los tambores del sur" (2003)
Los an~os Luz discos LAL022(ARGENTINA)
01 CARIBE
02 ONOMATOPE
03 SOMBRAS
04 CHACARERA DEL VIOLIN
05 LA CELOSA DE TU VIEJA
06 TEMA DE MAELA
07 SPEAKING TANGO
08 ELISA
09 20AN~OS DE PASION
10 MITOS
11 GATO DE COSQUIN
12 VENGA
13 LOUANGES DU SUD
●アルゼンチン盤の他に、アメリカ盤なども出ているようだし、もちろん入手可能だ。外資系大手輸入店などに入ることがあるので、十分気を付けていよう。


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カラ・マルカ言えるかな?
2006-07-09 Sun 04:41


【K'ALA MARKA / "De los Andes al Amazonas " 】(1993)

90年代。
世界を制したスーパーヒーローは、マッチョなアメリカンコミックス・ヒーローでもなければ、世界を驚愕させた日本製合体変形巨大ロボットでもなく、一匹の黄色い「電気ネズミ」だった。

このネズミ。
アメリカのお坊っちゃんたちから、果ては南米最貧国の少年たちに至るまで、世界中の子供たちの心をことごとく魅了した。
その結果、日本経済のみならず世界経済までもが動き出す。
トレーディング・カードは高値で取り引きされ、ジャンボジェット機には黄色いネズミがでかでかと描かれる始末。
欧米各国では、あまりのブームの過熱ぶりに眉をひそめる大人達も続出。賛否両論が沸き起こる中、ついにはローマ教皇庁から、
少年と電気ネズミが2人で力を合わせる様子は大変素晴らしいではないか
とのコメントまで出される騒ぎだった。

同様のことが、同じく90年代にフォルクローレ界でも起きていた。

フォルクローレ界に「もっとも大きな影響を与えたアルティスタ」は、カルカスでもなければユパンキでもなく、2匹の、もとい2人組の「電気フォルクローレ(と揶揄された)」ユニットだった。※1

このカラ・マルカ。
本場ボリビアのオーディエンスから、果ては日本の大学生たちに至るまで、世界中のフォルクローレ・ファンの心をことごとく魅了した。
その結果、出稼ぎミュージシャンのみならずボリビアの大御所ミュージシャンまでもが動き出す。
カリスマとして80年代を君臨し続けたあのカルカスは、ついにカラ・マルカのお家芸ともいえるトバスのリズムで作曲し※2・3、さらには今までの編成を改め、E.ベースやドラムスを加えて跳ねるようなリズムで「SOL DE LOS ANDES」をプレイするようになる始末。
日本では、アルバムごとにド派手になっていくカラ・マルカのアレンジに「こんなのフォルクローレじゃない!」という悲痛な声が上がり、眉をひそめるファンも続出。
賛否両論が沸き起こる中、そのような人たちが「Amazonas」以降の彼らを揶揄していった言葉が、
電気フォルクローレ」だった。※4

しかし、カラ・マルカの音楽は、本当に彼らが言うように底の浅いただのノリノリ・ディスコ・チューンに過ぎなかったのだろうか?

否。
彼らの特徴は何といっても、そのアイマライズムである。
エレキベースを加えようが、打ち込み音をいくつも重ねようが、かえってその楽曲はリズムが強調され、アイマラ臭さを増していく。
本来、フォルクローレはみな仕事歌か舞曲だった。
そう。
「何を使って演奏するか」が最初にあるのではない。
大事なのは「何を演奏するか」なのだ。
彼らはフォルクローレ本来のリズムを強調した音楽を目指した。
そのために「何を使うか」が決定されたのだ。

現在のスーパーヒーローは誰なんだろう。
「電気ネズミ」ほどの爆発的なブームがないのでよく分からない。
ただ、「昆虫王」だろうが、「着せ替え魔女」だろうが、それらの手法はみなあの当時の「電気ネズミ」ショックの上に立脚しているものに過ぎない。

フォルクローレだとて同様だ。※5


【注】
※1
元々カラ・マルカは決して2人組でもなければ、電気フォルクローレでもなかった。

※2
ヒット曲といえばウァイニョ一辺倒だったボリビアフォルクローレ界に、サヤ、モレナーダ、チュントゥンキ、ティンク、タキラリなどの様々なヒット曲を連発し、そのたびにボリビア人に「リズムの再発見」をさせていた唯一のグループといって良かったのがカルカスだ。
しかし、ほとんど忘れられていたようなトバスのリズムでカラ・マルカがブームを起こしたことは快挙であったし、その後カルカスが「EL ULTIMO AMANECER」でトバスを演奏したときには、時代の変遷を感じずにはいられなかった。

※3
トバスとは、「あるある探検隊」のリズムである。というのは嘘。ジャングルのトーバ族のリズムを高地の人たちが再解釈したリズム。これが、ダンサブルできわめてカッコよく、当時ディスコで大流行した。

※4
当時の論争、よく考えると、日本人がフォルクローレに求めていたものが見えてくる。「素朴な音色」で「メロディ」を聴きたいという人が多いのだろう。音楽にはメロディ軸と、リズム軸があるが、日本のファンはフォルクローレに「リズムの喜び」を求めていなかったのだとすれば、この論争も納得がいく。

※5
カラマルカの新譜は2001年以降、発表されていない。
やっぱり行き詰まってるのかな?
今度はアルゼンチンのMININO GARAYみたいに、リズムセクションは生のフォルクローレ・パーカッションばかりでマルチ録音してみて欲しいなあ。



"Amazonas"

【アルバム・データ】
<LP>
K'ALA MARKA "De los Andes al Amazonas" (1993)
INBOFON IBLP - 30.044(BOLIVIA)
01 AMAZONAS (Tobas)
02 AMA SUA, AMA LLULLA, AMA KHELLA (Phuna)
03 MALAKUN WAWAPA (Sicuri Pandillero)
04 PROCESION (Lamento Aymara)
05 CORAZON DE PIEDRA (Pasacalle)
06 ELAY PUE' (Carnavalito)
07 PANCARITA (Motivo)
08 EXPEDICION URU (Ritmo de olas)
<CD>
K'ALA MARKA "De los Andes al Amazonas" (1993)
INBOFON CDI - 30.044(BOLIVIA)

●CDは定番商品可能なので入手出来る。
●ただし、LP盤とは大きく違う。トラックが2曲増えているが、そのために絶妙なバランスが壊れた。
●LP盤の1~4曲目までの流れは、"SANTANA III"に匹敵する完璧さであ り、特に3曲目"MARAKUN WAWAPA"は前2曲のエネルギーを受けて爆発するカタストロフだったにも関わらず、CD盤では3曲目にタキラリが1曲入り、"MARAKUN WAWAPA"は、その後となっている。
●「じゃあ、ボーナストラック飛ばして聴けばいいじゃん」となるが、それでも元のアルバムにはならない。さすがに流れがおかしくなったため、CD盤"MARAKUN WAWAPA"にはカンペシーノのおじいさんの歌声がイントロに挿入されており、前からの流れが寸断されてしまうのだ。
●ミックスに色々凝って手を加えたけれども、そのために大事な物がどこかにいっちゃた、という、まるで手塚漫画みたいなCDでした。


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