アルゼンチン音楽の自由闊達さは何処から……ソレダー
2009-07-30 Thu 02:17

【 SOLEDAD / libre 】(2001)

(1)まだ未熟→(2)熟果→(3)熟れすぎ


ソレダーsoledadのアルバム"libre"は、まさに上記(2)にあたる。

新鮮だけど、まだ固くて食べにくい(1)。
完成されたけどすでに閉塞感でグダグダになりがちな(3)。

翻ってみるに、最も「」で「食べごろ」な時期が(2)なのである。
えっ。以前と言ってることが違うって。何のこと。

ソレダーは前作"Yo Si Quiero A Mi Pais" ('99) でサウンドの全面的なモデルチェンジを行った。さらに同じ路線を追究した末に完成した傑作アルバムが本作 "libre"なのだ。
私が「名盤」と讃えた前作といえども、このアルバムの前には、(1)という立場になりかねないくらいだ。

M-1はいきなりチャランゴやサンポーニャ炸裂のウァイニョ※1。ここまでアンデスに振るか!と思いきや、いきなりM-2タイトル曲はルンバ・フラメンカ。 これはどう考えても、通常のアルゼンチン・フォルクローレのアルバムではない。確かにラスギード・ドブレやチャカレーラ、そしてセサル・イセラとオラシオ・グアラニによるサンバまで揃ってはいる。しかし、ウルグアイのカンドンベ、ドミニカのバチャータ、キューバのソン……そして後半のクライマックスはタキラリ・ロック※2。何とチリのロス・ハイバス LOS JAIVAS の永遠の名曲「トドス・フントス Todos juntos」なのだ!! 完璧にラテンポップスのアルバムである。

ポップスという手法で印象を統合することで、移民や国境を接する国々など諸要素混じり合ったアルゼンチンとその音楽を違和感なく表現して見せているのだ。なのにそれを前面に出すことはない。あくまで女の子のアーティストが歌うアルバムなのだ。
何という凄みだ。
怖い顔して怒ってるぜってみせる奴より、笑いながら心中の怒りを見せない人の方が凄みがあるでしょ。いや誰ってわけじゃないけど。ああ、コワいよー。

これ以降、ソレダーは幾枚か力の入った企画盤やオリジナル・アルバムをリリースしたが、ここでここまでやってしまうと、後の作品はドツボにはまってしまうというか、個人的には熟れすぎという感が免れ得ない。

次のオリジナル・アルバム"ADONDE VAYAS" ( '03)では「表現手段としてのラテンポップス化」というコンセプトをさらに強力に押し進めた。
だから、"libre"で成功した「トドス・フントス」の路線も当然、踏襲している。
ビッグ・アーティストのカバーとして彼女がチャレンジしたのは、ボリビアはカルカスのサヤ・ナンバー「ミ・スエニョ・アモール Mi suen~o amor」。なんと、そこでカルカスとの夢の共演を果たしている。
ジャケットもここまで凝りようがないと思われるほど美しいデジパック仕様。ここまでコンセプトを極めておきながら、いかにも内省化しすぎの感がある。まるで「サンタナIII」という熟果を実らせた後のサンタナのようなのだ。

そう考えると、これ以上のアルバムはもう出ないのではないかとさえ思えてくる。

「タンゴ」だの「フォルクローレ」だのというステロタイプとは一線を画したアルゼンチンを表現すべく、本当の意味でのフォルクローレを掘り下げようとした傑作。
一方で、世界戦略に沿って、世界共通なポップ感覚を共有しようとした野心作。※3
おまけに、泣けちゃうほどアイドル・ポップスとしての傑作。
う~、たまらん。

"TODOS JUNTOS" のPV
(ソレダーのオフィシャルビデオは版権管理が厳しく、ブログ埋め込みが許可されていない)。

【注】
※1
一応、表記はカルナバリート。しかし、微妙なニュアンスの違いはともかく、実質上は山岳臭いリズム、ウァイニョである。

※2
タキラリはボリビア東部のサンタクルスのリズム。取り上げかたにもよるが、低地地方特有のパーカッショニズムはネオ・フォルクローレ界でも多くのアーティストのこころをつかみ、80年代に盛んに演奏された。

※3
このアルバムを引っさげてアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コスタリカ、ペルー、ウルグアイへのツアーを行っている。


【アルバム・データ】
<CD>



"SOLEDAD / libre" (2001)
SONYMUSIC EPIC506216 2 (Argentina)
1. TREN DEL CIELO
2. LIBRE
3. QUIERO ABRAZARTE TANTO
4. OTORO DIA MAS
5. AYER TE VI
6. OBSESION
7. CHACARERA DE UN TRISTE
8. CANCION DEL JANGADERO
9. PADRE DEL CARNAVAL
10. NO VALE LA PENA
11. DESDE ALGUN LUGAR
12.TODOS JUNTOS
13.MANOS A LA OBRA

<CD>
"SOLEDAD / libre" (NUEVA EDICION / 2004)
SONYMUSIC COLUMBIA 2-493786 (Argentina)
1. TREN DEL CIELO
2. LIBRE
3. QUIERO ABRAZARTE TANTO
4. OTORO DIA MAS
5. AYER TE VI
6. OBSESION
7. CHACARERA DE UN TRISTE
8. CANCION DEL JANGADERO
9. PADRE DEL CARNAVAL
10. NO VALE LA PENA
11. DESDE ALGUN LUGAR
12.TODOS JUNTOS
13.MANOS A LA OBRA
14.MEGAMIX
●実はこのアルバム、3年後に新ヴァージョンが発売された(トップ画像の緑ジャケットが新ヴァージョン。ピンクジャケットは旧ヴァージョン)。SONY MUSICであることは変わりないのだが、レーベルがEPIからCOLUMBIAに復帰。ジャケットを一新して、トドス・フントスなど3曲をリミックスしてつなげたボーナストラックを収録している。


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