「朕はカルカスなり」、ゴンサロの逆襲
2009-08-31 Mon 04:08

【 KJARKAS / El Amor y El Libertad 】(1987)

うわ。

なにこれ。
人造人間キカイダーかと思った※1

何か叫んでる男の顔は
手にはチャランゴ。
カルカスのトップヴォーカル、エルメールがモデルか。

しかし、傍らに書かれたスペイン語歌詞はこのアルバム所収の「風に向かって Contra El Viento」。作詞・作曲をしたカルカスのリーダー、ゴンサロの直筆だ。

ああ。ということは、この赤青男はゴンサロか。

この曲は、あえて作詞・作曲のゴンサロ自身がソロボーカルをとるコテコテなポルカ。聴けばわかるが、もう「いかにも」な感じ。だみ声で硬派なゴンサロ色爆発ナンバーなのだ。多分、このジャケット絵は、ゴンサロが髪をなびかせ、「風に向かって」歌っているところなのだろう。

●ジャケットに込められたアルバムの意図
しかし、このジャケットに込められたものは、「風に向かって」という曲の内容だけではないのだ。じゃあ、この絵に込められたもう一つの内容は? 実はその答えのヒントは赤と青の色使いだ。

さあ、この二色の組み合わせにはどんな意味がある?

「正義」と「悪」?

ブーッ。不正解。
♫正義と悪との青と赤~(『ゴーゴー!キカイダー』)などというテーマ曲を思い出してしまうのは、どっぷり昭和世代オヤジの一部。青と赤にそんな意味があるかい。

「止まれ」と「進め」?

はい、正解。
なわけない。そんな色を顔に塗りたくってどうする。

答えはフランスのトリコロール旗に隠されているといえばわかるかな。
「自由・平等・博愛」は「青・白・赤」で表現される。

ということは「赤と青」はまさに「愛と自由」。
このアルバムのタイトル曲「愛と自由 El Amor y El Libertad」を象徴しているのだろう。
そもそも、この曲、第2期カルカスになってからというもの、大ヒットをとばすウリーセスのポップな作曲センスに対し、どクエッカな曲やら、どモレナーダな曲やら、どディアブラーダな曲やらコテコテ路線ばかり追求してきたゴンサロが、ついにポップなナンバーに挑んだ本アルバム最大の目玉曲だ。

だから、このジャケットのスゴいところは、当アルバムの本質ともいえる曲を、2重3重で突いてくるところなのだ。結局、「風に向かって」を描いた絵にしろ、「愛と自由」の意味を込めた色にしろ、直筆の歌詞にしろ、言いたいことはただ一つ。
「カルカスはオレ様、ゴンサロのバンドだ!」

●ゴンサロの逆襲
そりゃそーだ。1stアルバムの頃はほとんどの曲がゴンサロのライティングだったのだ。
事実上、「ゴンサロのバンド」といってもよかったカルカスだが、80年頃より状況が変わってくる。
限られた曲数しか収録できないLPレコード※2。弟ウリーセスのポップなセンスが開花し始めると、当然ゴンサロのナンバーは減っていくことになる。
ついにはウリーセスの「ワヤヤイ Wa ya yay」、「泣きながら Llorando se fue」が記録的な大ヒットとなったLP『わが故郷の娘たちへ』"Canto a la mujer del mi pueblo" ('82)以降、ゴンサロのライティングは数曲のみの収録が続く。

以下の数字は左がゴンサロの曲、右がウリーセスの曲だ。

5th "Canto a la mujer del mi pueblo" ('82)
2:6

6th "Pueblos Perdidos" ('84)
2:5

7th "Sol de los Andes" ('84)
2:7

8th "Esperanzas" ('85)
0:5

そう、ついにゴンサロの曲のないアルバムまで誕生した※3
新加入したフェルナンド・トリーコも次々と新感覚の曲を提供。
いつの間にかカルカスは変貌したのだ。

ゴンサロがこのカルカスをどう思っていたかはわからない。
ますます加速するポップな展開に、「オレだったらこうする……」と思ったか、「オレだってそれぐらい……」と思ったか。いや単に、「休みすぎたから、今度はオレにもやらせて……」だったのか。

とにもかくにも「愛と自由」はこういうアルバムになった。

9th "El Amol y la Libertad" ('87)
7:1

ウリセスが関わったのは1曲のみ。しかもゴンサロとの共作。
ほとんどの曲がゴンサロの手によるものなのである。
出すアルバムがことごとくヒットした絶頂期のカルカスだ。
当然このアルバムも高く評価され、いまだに名盤として推す人も少なくない。

そして、このアルバムから出た大ヒット曲は。
時が経てば Tiempo Al Tiempo


ゴンサロだってヒット曲書けるんじゃん!?
うんうん、そうだね。
ただし、この曲、ウリセスとの共作なんだけど。

【注】
※1 
不完全な良心回路のために、苦しみ、人間になりたいと願う人造人間を描いた石森章太郎原作の特撮ドラマ。
原作マンガは兄弟殺戮という悲惨な展開で終了。

※2
LPレコードと言えば、基本的にはAB両面でほぼ46分以内におさめるのが日本でも普通だった。それ以上の収録も可能だったようだが、レコード時代末期になるまで46分以上の収録を基本的にしないレーベルもあった。ちなみに、ボリビアのLPはなんと30数分前後の収録がほとんどであった。技術的な問題だったのか、アーティスト側の意向だったのかは不明。もちろん、ボリビアものであっても、40分余りの収録時間があるLPもあることを考えると、音楽面での問題だったのかもしれない。

※3
いや、もちろんゴンサロのナンバーがないのには、「エスペランサ」が日本でのプロデュース、レコーディングだったため、なのだが。飛行機嫌いのゴンサロは、このとき当然のように来日していない。




"Tiempo al Tiempo"

【アルバム・データ】
<LP>
" KJARKAS / El Amor y El Libertad " (1987)
BO/LR-1563(1996)
Lauro (BOLIVIA)
01. EL AMOR Y LA LIBERTAD (Huayn~o-Cancion)
02. MI SANTA CRUZ (Carnaval)
03. AL FINAL (Taquirari)
04. CONTRA EL VIENTO (Polka)
05. RECUERDOS (Saya)
06. TIEMPO AL TIEMPO (Tonada)
07. TARIJA (Tonada)
08. CORAZON A CORAZON (Kaluyo)
09. DEJARAS (Tonada)
10. SUCRE (Cueca)


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