カラ・マルカ言えるかな?
2006-07-09 Sun 04:41


【K'ALA MARKA / "De los Andes al Amazonas " 】(1993)

90年代。
世界を制したスーパーヒーローは、マッチョなアメリカンコミックス・ヒーローでもなければ、世界を驚愕させた日本製合体変形巨大ロボットでもなく、一匹の黄色い「電気ネズミ」だった。

このネズミ。
アメリカのお坊っちゃんたちから、果ては南米最貧国の少年たちに至るまで、世界中の子供たちの心をことごとく魅了した。
その結果、日本経済のみならず世界経済までもが動き出す。
トレーディング・カードは高値で取り引きされ、ジャンボジェット機には黄色いネズミがでかでかと描かれる始末。
欧米各国では、あまりのブームの過熱ぶりに眉をひそめる大人達も続出。賛否両論が沸き起こる中、ついにはローマ教皇庁から、
少年と電気ネズミが2人で力を合わせる様子は大変素晴らしいではないか
とのコメントまで出される騒ぎだった。

同様のことが、同じく90年代にフォルクローレ界でも起きていた。

フォルクローレ界に「もっとも大きな影響を与えたアルティスタ」は、カルカスでもなければユパンキでもなく、2匹の、もとい2人組の「電気フォルクローレ(と揶揄された)」ユニットだった。※1

このカラ・マルカ。
本場ボリビアのオーディエンスから、果ては日本の大学生たちに至るまで、世界中のフォルクローレ・ファンの心をことごとく魅了した。
その結果、出稼ぎミュージシャンのみならずボリビアの大御所ミュージシャンまでもが動き出す。
カリスマとして80年代を君臨し続けたあのカルカスは、ついにカラ・マルカのお家芸ともいえるトバスのリズムで作曲し※2・3、さらには今までの編成を改め、E.ベースやドラムスを加えて跳ねるようなリズムで「SOL DE LOS ANDES」をプレイするようになる始末。
日本では、アルバムごとにド派手になっていくカラ・マルカのアレンジに「こんなのフォルクローレじゃない!」という悲痛な声が上がり、眉をひそめるファンも続出。
賛否両論が沸き起こる中、そのような人たちが「Amazonas」以降の彼らを揶揄していった言葉が、
電気フォルクローレ」だった。※4

しかし、カラ・マルカの音楽は、本当に彼らが言うように底の浅いただのノリノリ・ディスコ・チューンに過ぎなかったのだろうか?

否。
彼らの特徴は何といっても、そのアイマライズムである。
エレキベースを加えようが、打ち込み音をいくつも重ねようが、かえってその楽曲はリズムが強調され、アイマラ臭さを増していく。
本来、フォルクローレはみな仕事歌か舞曲だった。
そう。
「何を使って演奏するか」が最初にあるのではない。
大事なのは「何を演奏するか」なのだ。
彼らはフォルクローレ本来のリズムを強調した音楽を目指した。
そのために「何を使うか」が決定されたのだ。

現在のスーパーヒーローは誰なんだろう。
「電気ネズミ」ほどの爆発的なブームがないのでよく分からない。
ただ、「昆虫王」だろうが、「着せ替え魔女」だろうが、それらの手法はみなあの当時の「電気ネズミ」ショックの上に立脚しているものに過ぎない。

フォルクローレだとて同様だ。※5


【注】
※1
元々カラ・マルカは決して2人組でもなければ、電気フォルクローレでもなかった。

※2
ヒット曲といえばウァイニョ一辺倒だったボリビアフォルクローレ界に、サヤ、モレナーダ、チュントゥンキ、ティンク、タキラリなどの様々なヒット曲を連発し、そのたびにボリビア人に「リズムの再発見」をさせていた唯一のグループといって良かったのがカルカスだ。
しかし、ほとんど忘れられていたようなトバスのリズムでカラ・マルカがブームを起こしたことは快挙であったし、その後カルカスが「EL ULTIMO AMANECER」でトバスを演奏したときには、時代の変遷を感じずにはいられなかった。

※3
トバスとは、「あるある探検隊」のリズムである。というのは嘘。ジャングルのトーバ族のリズムを高地の人たちが再解釈したリズム。これが、ダンサブルできわめてカッコよく、当時ディスコで大流行した。

※4
当時の論争、よく考えると、日本人がフォルクローレに求めていたものが見えてくる。「素朴な音色」で「メロディ」を聴きたいという人が多いのだろう。音楽にはメロディ軸と、リズム軸があるが、日本のファンはフォルクローレに「リズムの喜び」を求めていなかったのだとすれば、この論争も納得がいく。

※5
カラマルカの新譜は2001年以降、発表されていない。
やっぱり行き詰まってるのかな?
今度はアルゼンチンのMININO GARAYみたいに、リズムセクションは生のフォルクローレ・パーカッションばかりでマルチ録音してみて欲しいなあ。



"Amazonas"

【アルバム・データ】
<LP>
K'ALA MARKA "De los Andes al Amazonas" (1993)
INBOFON IBLP - 30.044(BOLIVIA)
01 AMAZONAS (Tobas)
02 AMA SUA, AMA LLULLA, AMA KHELLA (Phuna)
03 MALAKUN WAWAPA (Sicuri Pandillero)
04 PROCESION (Lamento Aymara)
05 CORAZON DE PIEDRA (Pasacalle)
06 ELAY PUE' (Carnavalito)
07 PANCARITA (Motivo)
08 EXPEDICION URU (Ritmo de olas)
<CD>
K'ALA MARKA "De los Andes al Amazonas" (1993)
INBOFON CDI - 30.044(BOLIVIA)

●CDは定番商品可能なので入手出来る。
●ただし、LP盤とは大きく違う。トラックが2曲増えているが、そのために絶妙なバランスが壊れた。
●LP盤の1~4曲目までの流れは、"SANTANA III"に匹敵する完璧さであ り、特に3曲目"MARAKUN WAWAPA"は前2曲のエネルギーを受けて爆発するカタストロフだったにも関わらず、CD盤では3曲目にタキラリが1曲入り、"MARAKUN WAWAPA"は、その後となっている。
●「じゃあ、ボーナストラック飛ばして聴けばいいじゃん」となるが、それでも元のアルバムにはならない。さすがに流れがおかしくなったため、CD盤"MARAKUN WAWAPA"にはカンペシーノのおじいさんの歌声がイントロに挿入されており、前からの流れが寸断されてしまうのだ。
●ミックスに色々凝って手を加えたけれども、そのために大事な物がどこかにいっちゃた、という、まるで手塚漫画みたいなCDでした。


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コメント
-カラマルカ新譜-
アドレスを見失っていたので、久々に来ました。カラマルカ最近新譜出したらしいですよ。トラックバックしようと思ったけど、送信先URLが見つからないとか言うので、とりあえず↓記事です。
http://yaplog.jp/trasnochador/archive/287

しかしカラマルカ以前のトバスは決してダンサブルではないです。DANZAS TRADICIONALES DE BOLIVIA (CD-13884)
これとか聴くと激しくジミーv-39。まさにカラマルカ・ショックです。

やはりカラマルカの延長線ではあるのですが、最近ヤラのチャランギスタに注目しています。モセニャーダ、ワカワカ、ポトーロなど、更にマニアックなリズムの掘り起しが上手く、先日のSurcos Bolivianosではモセニャーダの曲のリクエストがすごいといってました。カチャスのプフリャイ(レイナルド・ベガ作)も結構人気あるようです。さて、(似非?)アウトクトナ・ブームは来るでしょうか?
http://yaplog.jp/trasnochador/archive/338
2006-08-18 Fri 07:13 | URL | ゆな #f10z4yi6[ 内容変更]
-おおっ-
カラマルカの新譜情報(何年ぶりなんや)!
ありがとうございます!!
「スペイン語に対する努力」という非常に大切なものが欠如している(^^;)私にとって、ゆな様の情報は本当に貴重です。
たしかに、カラマルカ以前のトバスってえらい地味ですよね。私もなんだったか昔買った音源を改めて聴いたときに<Toba>などと表記してあってビックリした記憶が。

YARAのチャランゴってRamiro Alcocer Lopezですよね。この人、たしかに94年の5人SAYANTAのときも、huaylasとかsalaqueとかでアルバム作ってますが、当時のカッコヨイ系サウンドを目指すグループにはちょっとない選択ですね。それにしても「POTOLO」なんて言葉、聞いたことないや。後でYARAのCD聴いてみます。

まあ、ポップス用に変な形で定着するのかも知れませんが、それにしたって、新リズムの掘り起こしをトップグループ以外の若い力がおこなっているのは(産業としてのフォルクにとって刺激になりますし)好感が持てます。
2006-08-18 Fri 15:50 | URL | もち #k44oHjjU[ 内容変更]
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