でもジャケットは十分変だけど。……アルボリート
2007-09-26 Wed 21:04

【ARBOLITO / LA ARVEJA ESPERANZA】(2002)

そう、どこか「ヘン」なのである。

何のことかって、フォルクロリスタが、ロックやポップスにチャレンジするケースのことである。

グスタボ・サンタオラーヤをはじめ、ロックをやってる手合いが「フォルクローレも混ぜてみました」っていう逆のケースは意外と多く、この場合は世界的に高評価を得ているアーティストだって少なくない※1。もちろん、ピンからキリまでいろいろあるのだが、何より「ヘン」な印象を受けることは比較的少ない。

しかし、フォルクローレをやってる御仁がロックやポップスに近づくと、どうして「こんなセンス」になっちゃうんだろう。やることなすことがとことんマンネリなあの方々とか、シンセのストリングス音と電子ドラムがめちゃくちゃチープなあの方々とか。

もちろんそうじゃないケースもいっぱいある。しかし、テキトーに大量生産されたテクノ・クンビアの影響か、もう、全くアンビリーバボーな音がいっぱいなのは否めない。とにかく鼻息が荒い割には、しょぼいアレンジテクニックの未熟さに満ちあふれている。ポップスやロックとしてのセンスは日本から2、30年は遅れてるんじゃなかろうか、という場合も少なくない。軽音部に入部して初めてギター持ったことで「カッコいいでしょ!」って満足しちゃった高校生みたいな。
ある意味、何とも微笑ましい

確かに、微笑ましくはある。
あるけど。

横綱にはなれない。
名盤にはなれないのだ。

オトナの女性なら「まあ、カワイイわね」と楽しむ余裕のある方もいらっしゃるかもしれない。しかし、我々にしてみれば、これはちょっと「イタイ」のではというケースも。まあ、こうして少年はオトナになっていくのだね(←?)。

しかし、恐るべきはロック大国アルゼンチンであるぞ※2
今回ご紹介するのは、1stでは、たしかにフォルクローレだったはずのアルボリート Arbolito である。ところが、この連中ときたら。

3rdの本作(2002)ではすでに日本の輸入業者が「フォルクローレ色濃いロック・バンド」「アルゼンチナ・ロッケラの系譜を正統に継ぐ」と紹介しちゃうくらいのオルタナバンドぶりなのだ※3

ヴァイオリンやクラリネット、アコーディオンなどを交えた演奏もかなりあり、日本人としては、なんだかチンドンぽくて萌え~。いや、楽器編成がどうとかいう問題ではない。サヤとウァイニョ、ロックステディが同じ1曲の中で自由に行き来しちゃったりするあたり、「フォルクローレとロックを混ぜたよ」で満足している輩とは大いに違うわけである。「みんな2拍子なんだけど、ニュアンスを変えるとこのリズムになりますよ」といちいち、やってみせるところが面白い。

でもね、別にプログレや前衛を気取ってるわけじゃないのだ。「自分たちの好きな音楽を正直にやって、それがいつかメインストリームになれば幸せ」くらいの姿勢。これは気持ち良い。やっていることは妙に実験的だったりして、一歩間違えればそういうマイナージャンルになりそうな要素を持っているはずなのに、ポップに「楽しもうぜ !!」な姿勢なのだ。

それはYouTubeにアップされている彼らの映像を見るとよくわかる。ものすごい数の若者たちが彼らの音楽に熱狂し、踊り狂う。あまりの連中の興奮ぶりにセクスィー部長でも登場したのかと本気で心配したくらいだ※4

セクスィー部長は登場しないが、あの伝説のクロスオーヴァー・コンフント、M.P.A.ベロニカ・コンドミが登場。か・か・か・感激っ!! そう、20年も前にフォルクローレとロックとの融合を果たしたMPAをリスペクトし、その精神を継承しつつも、さらに様々な音楽をどん欲に取り込む。スカありーの、カンドンベありーの、ロックありーの、チャカレーラありーの、SARIRIのHR/HMカバーありーの、ブルーズありーの…。一部の好事家のためではなく、現代を生きる自分たちの音楽を創作するため限りなくポピュラーになろうとするバンド。

それでも根っこをきちんと大事にし続けるオルタナティブバンドなのである。


●"Sariri" アイマラのメロディは、意外にもHR/HMに振っちゃってもイケテマス。


●"Es Preciso " アグスティン・ロンコニが弾くパブロ・リクテルのチャランゴが美しすぎる……。

【注】

※1
グスタボ・サンタオラーヤ Gustavo Santaolalla は、昨今のロッケン・エスパニョールの問題作・話題作をプロデュースしつづける南米ロック界の巨人。日本で一般的な知名度を得るようになったきっかけは映画『モーターサイクルズ・ダイアリー』のサントラを担当したり、フアネスのプロデュースをしていたりというところかもしれないが、南米ロックファンの間では70年代の伝説的サイケロックバンド、アルコ・イリス Arco Iris で早くから鬼才として知られていた。

※2
ロックは南米の多くの国において、70~80年代に軍事政権支配、経済的問題、マスメディアの未発達や民族問題など、多くの問題が絡んだこともあり、メインストリームというよりはどちらかというとマイナーシーンかアンダーグラウンドでの活動を強いられてきたことが多いジャンルだ。

ところが、「南米のパリ」などと称され、白人中心の経済優等国であったアルゼンチンでは、70年代からロックが大いに活躍していた。世界的な傾向からいえば、ロックは80~90年代あたりには精神のよりどころを完全に失って細分化したあげくに迷走し、新興のブラックミュージックの持つパワーに気圧されて停滞してしまったはずだった。

しかし、アルゼンチンやメキシコ、ブラジルからスタートしたロックの流れは南米中に広まり、現在では各国において自己のアイデンティティと社会的な側面を内包したミクスチュア/オルタナティブ・ロックが続々登場している。世界的潮流としては、白亜紀かジュラ紀にはすでに絶滅してしまったプログレまでもが、ここ南米においては元気に活動しており、多くのロックマニアが注目し、常にアンテナを張りめぐらせている地域なのである。 

※3
紹介文の一例を抜粋しよう。「アルゼンチン・ロック特有の乾いて歪むエレキ・ギターサウンドに、エレキ・ベースとドラムが畳み掛け突っかかるようなプログレッシヴ変拍子にスカのテイストも織り交ぜ。アルゼンチナ・ロッケラの系譜を正統に継ぐ、情感に満ちた男性ヴォーカル」 。

※4
NHK「サラリーマンneo / シーズン2」に突如登場したラテン・ドン・ファンなサラリーマン。Dragon Ashの「El Alma」、ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」をBGMに視聴者を興奮の渦に巻き込んだ。本名、色香恋次郎(沢村一樹)。・・・というか、言葉での説明不能。


【アルバム・データ】
<CD>
"ARBOLITO / LA ALVEJA ESPARANZA" (2002)
FK076 DOBLE EFE (Argentina)
01. Intro vinito y amor
02. Vinito y amor
03. La arveja esperanza
04. Estofado
05. Polkatronica
06. Telaran~as
07. Sariri
08. Es preciso
09. Seria miseria
10. El sillon
11. Seria miseria
12. 2015
13. La novia
14. Si me voy antes que vos

オフィシャルHPで一部試聴ができる。
●YouTubeでオフィシャルから全曲アップされました!


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