『スパイダーマン3』とルス・デル・アンデ
2008-08-16 Sat 04:09

【LUZ DEL ANDE / Suite ecologico SER】(1998)

あーあー、何とでもいっておくれ。
確かに『スパイダーマン3』『アポカリプト』、日本では評判があまり良くない。
でも、この2本は見る価値があると思うのだ。

あのね、両方ともものすごくテーマがはっきりしているのだ。
両者ともにテーマはアメリカ現代社会の閉塞感に対する強烈な批判提案だ。

●テーマはどうやって表現される?
一流クリエイターの実力とは何か。
それは、作品を通して受け手に何かを納得させちゃう力である。
何かを訴えたい監督は比喩・構成などの表現方法を駆使し、作品全体を通してテーマを展開させる。
ストーリーと関係なしにラストでいきなり登場人物がテーマを口頭で訴えちゃったりするのはもう、おゲレツでしょ。そんなことなら、最初から監督が言いたいことをカメラを前に訴えればいいことである。

「諸君、アメリカ社会は退廃している!」
「必ず最後に愛が勝つ!」

「諸君、世界の憎しみの連鎖を断て!」
「汝隣人を許しなさい!」

「やべー、うどん旨い!」
「オレのプリン勝手に食ったの誰だ!」

ね?
言葉で訴えたって「はあ?」でしょ?
「わかったよ、うるせーな」でしょ?※1

だけど、そんな単細胞お下劣映画がいかに多いか。
『スパイダーマン3』は、エンタメとして観客を楽しませながらテーマが紡ぎだされていく。「登場人物が多すぎる」なんてもっともらしく聞こえる意見も多かったようだが、登場人物の配置は、実は巧妙きわまりないのだ。作品構成は『1』でテーマ提示、それを受けて『2』では苦悩とそれに対する解決案が小出しにされ、『3』で解決への提示をして壮大に終わるという、まるで交響曲状態。
ただ、一貫してアメリカ論聖書に根ざした倫理観がテーマになっているため、日本人には理解しがたいのは仕方がないかも。

あ?あう?
いつの間にかスパイダーマン論に。
ちがう、ちがう。

音楽や絵や映像の意味を一瞬に受け手がわかっちゃう快感というのがある、といいたかったのだ。映画や音楽や小説を鑑賞しているときに作者の意図がびんびん伝わってくる時の興奮。まあ、どこぞの台詞で言えば、考えるんじゃない、感じるのだよ。

中学生のときはさっぱりわからなかったのに、少しオトナになってから改めて鑑賞してみると震えた、涙した、なんて作品はない?
傲慢な言い方をすれば、作品を駄作扱いする前に「自分には理解できないだけかも」と謙虚にとらえることも必要なのである。

●ルス・デル・アンデが何を表現したか
こんなことを己の不明も恥じずにエラそうに長々と書いたのには、理由がある。
世紀の大傑作『Pheska patac mara... 』に次いで発表されたルス・デル・アンデ『Suite Ecologico "SER"』 が、日本ではあまり評価されなかったという話を聞いたからである。



"Tema del Sol"


"Tema de la Luna"


とりあえずえらく暗いフォルクローレであることは確かだ。
そりゃあ、"Suite ecologico SER"という原題を考えてみればわかるだろう。
環境組曲と銘打たれているあたり、ノーテンキだったら大変なのである。それこそ別の意味で世紀の大傑作になっているだろう。まあ、それはともかく、こんな野心作が評価されないなんて。そんな馬鹿な。

曲構成は
1)プロローグ
2)太陽のテーマ
3)月のテーマ
4)海のテーマ
5)大地のテーマ
6)命
7)宇宙のテーマ
という順番。

実はこの順番は崩せないところが素晴らしい。
確かに各曲は独立しているように見える。
ところが。

太陽の光を受け→
は輝きその引力で→
は満ち引きその水源である→
大地の上で→
生命は生きていく

1つ1つがつながっているのだ。
しかも、曲と曲のつながりは同じ音にすることで、前後の存在がリンクしていることを表現している。

M-6までは1曲1曲(太陽・月・海・大地)すべての曲が、それ自体一個の完成した曲でありながら、どこか落ち着かない焦燥感を持ち合わせている。
特に、M-6 " Ser " は突出した激しい緊張感を漂わせる。不気味な雰囲気のアカペラで始まり、冒頭の1分以上にわたる激しいドラムソロ、それに続くせわしないメロディ展開。
焦燥感はここでピークを迎える。この曲のみ「~のテーマ」という書き方ではないということは、我々人類が生態系から突出してしまっていることを表しているのだろうか。

そして最後にすべてを統合した「宇宙のテーマ」である。
今までの曲がどこか落ち着かない風情を醸し出していたのに対し、「宇宙のテーマ」のみは大変な安らぎを感じさせてプロローグのテーマへと戻っていく。
太陽・月・海・大地・生命など1つ1つの存在が不安定な存在だとしても、宇宙全体で大きな安定した調和を見せている。この宇宙にすべてが包まれる構成になっているのだ。

これをことばで語るのは難しい
音楽ってスゴい。

評判が芳しくなかったってウソでしょ?※2、3

【注】
※1 
ちなみに6つある台詞のうち、上2つが『アポカリプト』のテーマ、中2つが『スパイダーマン3』のテーマ、下2つが私のテーマである。

※2 
ま、そこまでわかっている上で「好き」「嫌い」「評価する」「評価しない」があるのは当然のことなんだけどね。

※3 
納得いかない点が一点だけ。邦題である。組曲『生きとし生けるものへ
のために』このタイトルだけは突っ込まざるを得ない。変更してくれ~。

【アルバム・データ】
< CD >
"LUZ DEL ANDE / Suite ecologico SER " (1998)
eponeo records (JAPON)

01. Prologo
02. Tema del sol
03. Tema de la luna
04. Tema del mar
05. Tema de la tierra
06. Ser
07. Tema del universo

●一応、日本でプレスされたインディペンデント・レーベルと思われるが、日本語やJAPONという表記は一切なく、ボリビア盤という形をとっているようである。
●プロデュースをされた福岡氏のお店「アンデスの家ボリビア」のHPにはまだ掲載されているので購入が可能かもしれない。左のリンクから辿っていってくれたまえ。


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