いわゆる「フォルクローレ」を作った男たち……LOS JAIRAS
2008-12-23 Tue 02:29

【 LOS JAIRAS 】(1967)

古典的名作にはすべての要素が含まれる」って名言、聞いたことない?
それ以降の作品は、しょせんバリエーションに過ぎないってハナシ。
あれ? 聞いたことないの?




まあ、今、思いつんたんだけどね。

例えば、推理小説の祖、「シャーロック・ホームズ」シリーズだ。後のクリスティなどに見られる謎解きやトリックものの要素はもちろん、松本清張ばりの社会派、横溝正史みたいな土俗ものもある。乱歩みたいな耽美的怪奇があるかと思えば、西村京太郎じゃないが紀行ものも多い。国際政治が絡んだゴルゴ13みたいなものまである。

雑誌連載ストーリーマンガの祖、『ジャングル大帝』。もちろん動物マンガの代表作。でも、ギャグものの要素もてんこもり。さらには衝撃のラストで描かれる哲学的要素は『火の鳥』、ディズニーの『ライオンキング』に引き継がれている。しかも各国の思惑を描いたスパイものの要素が複雑に絡み合い、狂言回しのテーマには手塚SF三部作※1から移植されたSF要素まである。しかし人間と動物の関係に仮託して描かれるテーマは、一貫して白人世界に対し有色人種がどう生きてきたか、どう生きていくべきかという20世紀が抱えた歴史的問題なのだ。

そう。古典には、後の時代の作品に見られるあらゆる要素が目一杯に詰まっているのだ!

今回はそんな古典的名作ともいえるロス・ハイラスの名盤 "LOS JAIRAS" (1967)を紹介しよう。
現在は普通に見られるコンフント(ギター、チャランゴ、ケーナ、ボンボ)という形を決定し、アンデス古来のリズム(ウァイニョ、トナーダなど)、クリオージョ由来のリズム(クエカなど)をハイブリッド演奏した最初のグループである。エルネスト・カブールがチャランゴを、ヒルベルト・ファブレがケーナを担当していたというだけで、どれだけ伝説的なグループなのかがわかるというものだ。

実は、ロス・ハイラスがこのアルバムを発表したとき、私はまだ生まれていなかった。大学生になってカルカスやグルーポ・アイマラなどのLPをあちこちで買い漁っているときに出会ったのが、この一枚だ。う~ん、いかにも古色蒼然としたジャケット。名前だけはよく目にする歴史的なコンフント。

きっといわゆる「歴史的(古臭い?)演奏」なのだろうな。
カルカスやサビア・アンディーナと違って、きっと「素朴(適当?)」なのだろうな。
きっと「当時は(で、今は?)スゴかった」とか、そんなLPなのだろうな。

そう思いながらレコードに針を落としたときのあの感覚はいまだに覚えている。
腰が抜けた。
顔がにやけた。

まあ、録音が古いのは事実としても、そんなことはどうでも良くなる何かがそこにはあった。
そう。そこには「すべて」があったのだ。

カルカス? サビア?
別に新しくないじゃん(←暴論)。

一例としてあげてみるとするとボンボの叩き方。
知っている人は「何をこのトーシローが」と嗤うかも知れないが。
彼らは曲によってアルゼンチンチックな
ドドドドドントドドトドドドカカスカドドドトン!! みたいな叩き方も厭わない。
てっきり60~80年代のボリビアは
ドン・ドン・ドンドンドン。しか存在しないのかと思ってたよ。
ケーナやチャランゴの暴走っぷりといい、ギターの説得力といい、形式のバラエティさといい、パワーがありすぎる。


カルカスの劣化コピーでしかない90年代若手ミュージシャンたちより100倍も新しかった。メンバー一人一人のサウンドがはっきりと何かを主張している。決して脇役はいない。新しい自分たちだけの音楽を創造しようとする力がみなぎっているのだ。60年代後半~90年代までの20~30年間、何も新しいものが出てこなかったのか?とさえ思ったものだ。

90年代のボリビア音楽に新しい試みがなかったわけじゃなかったが、とにかくあのときのハイラスの衝撃は忘れられない。
現在の基本はすべてハイラスの中にあったのだ。

ハイラス。それはボリビア・フォルクローレすべてなのだ。


●"LA CACHARPAYA"

【注】
※1
『ロストワールド(前世紀)』(1948)、『メトロポリス(大都会)』(1948)、『来るべき世界(ネクストワールド)』(1951)

※2
ヒルベルト・ファブレはスイス出身のケーナ奏者。彼の登場により、それまで主流だったアルゼンチンのヒョロリラ~という細いケーナではなくボリビアの太いケーナが主流になっていく。このアルバムが出る前年、ファブレはエキセントリックに過ぎたチリのビオレッタ・パラと別れてボリビアへ移り、本格的にハイラスの活動を開始した。ビオレッタ・パラは名曲「人生よありがとう(Gracia a la Vida)」を残して翌年ピストル自殺している。通称 "グリンゴ"。「よそ者」とか「ガイジン」とか「アメ公」って意味だけど、いやじゃないのかな。


【アルバム・データ】
<LP>
"LOS JAIRAS" (1967)
LPL-13051 LYRA (Bolivia)

01. VIRGENES DEL SOL (danza incaica) 
02. LA CACHARPAYA (huayn~o) 
03. PENSANDO EN TI (cueca) 
04. LA LEN~ERA (yaravi) 
05. COPACABANA (huayn~o aymara) 
06. CURAHUARA DE CARANGAS (huayn~o)
07. ALTURAS DE HUALLPACAYU (huayn~o) 
08. CAMBITA (carnaval) 
09. TRES BAILECITOS (bailecitos) 
10. DOCTORCITO (danza autoctona) 
11. VIDALA DE LA LLUVIA (vidaita) 
12. REYES MORENOS (morenada)

●多分CDは出ていない。LP自体は私がこれを買った90年代初頭までプレスされていたくらいなのだから、CDリイシューされていても良さそうなのだけど……。


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