若き日のフェルナンド・ヒメネスは時をかける
2009-10-28 Wed 22:34

【 FERNANDO JIMENEZ / Zampon~a y Conjunto 】(1985)
【 FERNANDO JIMENEZ Y SU ZAMPON~A VOL.2 】 (1988)


例えば、美輪明宏だ。

今の学生に尋ねてみよう。
答えは決まっている。


オーラの泉」。
黙れ、小僧!


シスターボーイでもなければ、黒蜥蜴でもない。ヨイトマケですらない。

完全に物の怪だ。
彼の若い頃のキーワードである美しさ、というイメージは微塵もない。

フェルナンド・ヒメネスもそんな人かもしれない。
かつてのイメージが微塵もないのだ。
癒し系のキレイキレイな音を奏でるオッサン、という認識だったり。
最近の商売のやり方に「おいおい」だったり。

●忘れちゃってはいまいか
しかし、若き日の彼の印象は、果たしてそのようなものだったか。
カブールのバッキングで、グルーポ・コカで、新生ルス・デル・アンデで。
新楽器クロマッティック・サンポーニャで奏法を変革、10代の彼がサンポーニャをソロ楽器として独立させたのだ※1。空気を裂くような迫力のブイブイサウンド。どのようなメロディをも自由自在に操る革命的ミュージシャンというポジションだったのだ。「ヒメネス♡」っていう女の子のファンも多かったよね。

初期2部作のLPをお持ちの諸兄は、あの頃フェルヒメのサウンドを聴いて「カッチョええ~」ってシビれてた感覚、ちゃんと覚えていたであろうか※2。近年のイメージゆえに、忘れちゃってはいまいか。まるでインディーズ・パンクバンドのギター小僧のようなバリバリ感があったことを。当時のレコードに埃がかぶっていないだろうか。ああ、何てもったいない。くれ。

●ブッ飛ばしてるのはサンポーニャだけじゃなく
思い出してもみてほしい。
クロマティック・サンポーニャによって一気に広がった表現の幅世界観可能性。でも、そこで高級芸術志向なんて目指さない。お高くとまった音楽なんかくそくらえ。若さ溢れるスピード感よ、迫力よ。これがフェルヒメ初期の醍醐味なのだ。豪華バッキングメンバーもスゴい。フェルヒメの1st、2ndソロはギターにルイス・リコ ※3フレディ・サントス ※4。チャランゴにエルネスト・カブール ※5。ギターやヴォーカルにセサル・フナーロ ※6。さらにルス・デル・アンデのドナト・エスピノサ木下尊惇 ※7。パーカッションにはエルナン・ポンセ※8。そのプレイたるや、ダウンヒル用マウンテンバイクで坂道を全力で駆け抜ける疾走感さながら。その力強さよ。若々しさよ。新しさよ。

今一度聴いてみれば、単純にベースやエレドラを導入すればよいという昨今の安易な風潮が情けなくなること間違いなし。

なに?
アナクロニズムだと。

黙れ、小僧!


【注】
※1
クロマティック・サンポーニャ自体のアイディアはエルネスト・カブールによるものらしい。いわば天才師弟による共同開発といったところか。他方、ボリビアで活躍していた瀬木貴将が「クロマティック・サンポーニャを初めて開発した」との発言で非難されたことがあったが、多少、時間の前後はあるにしても、同時多発的に発生したのだろう。
※2
2ndアルバムから4年後、92年に3rdアルバム「十四年」が出ており、これも名盤と言ってよい作品である。しかし、明らかに目指すサウンドに大きな変化があるため、3部作とはできない。この3枚目のアルバムに関しては、また別の機会に取り扱いたい。この後にキーボード奏者とあまりに前衛的過ぎるLPを共同で作ったヒメネスは、回帰現象を起こし、フォルクローレの古典曲を演奏する「クラシコ」シリーズを何枚もリリースするようになる。
※3
ヌエバカンシオンの旗手。というより岡林信康。
※4
エルネスト・カブールやルーチョ・カブールと活動してきたギターの名手。
※5
まさか、いまさら。え?  
※6
ボリビア・ヌエバカンシオンのミュージシャンとしては最大の功労者といってよい伝説的ユニット。
※7
木下尊惇がオルランド・ロハスから名前を引き継いで結成した新生「ルス・デル・アンデ」は、木下尊惇、ドナト・エスピノサ、フェルナンド・ヒメネスの3人でスタートした。ボリビアのギタリストが皆、真似したといわれる木下のギター、大胆なインプロヴィゼーション・ソロをチャランゴの世界に持ち込んだドナトのチャランゴ、そして迫力のクロマティック・サンポーニャのヒメネスと、それぞれがボリビア音楽界に革命をもたらした凄腕ソロ・ミュージシャンの集団なのである。実は3枚出されたヒメネスのLPのうち、2枚目・3枚目はルス・デル・アンデのロゴがジャケットに入れられてリリースされている。
※8
ボンボを手でミュートしながら音階をつけるなどの奏法を多用し、ボリビアでは軽視されがちだったパーカッション奏法に革命をもたらした。



●"Tiahuanacu"

【アルバム・データ】
<LP>
" FERNANDO JIMENEZ / Zampon~a y Conjunto " (1985)
SLPL-13543
LYRA (BOLIVIA)
01. CHALLA (Motivo)
02. CHAQUIN~ANI (Motivo-Huayn~o)
03. KACHILAYA (Huayn~o)
04. EL CHOCLO (Tango)
05. CURICHI (Carnavalito)
06. OTAVALEN~O (Trote)
07. LEN~O VERDE (Trote)
08. TIAHUANACU (Leyenda)
09. BLANCA ROSA (Bailecito)
10. TRISTEZA DE MI PUEBLO (Huaychen~ito)

"FERNANDO JIMENEZ Y SU ZAMPON~A VOL.2" (1988)
SLPL-13607
LYRA (BOLIVIA)
01. REBELDIA DE LOS CONDORES (Toyos)
02. CHULUPI (Carnaval)
03. IDILIO (Cueca)
04. TRES POR UNO (Bailecito)
05. DESDE TRINIDAD (Carnaval)
06. JAN CHUIMANI (Sicuri)
07. FUNERALES DEL WATHIACURI (Motivo)
08. EL PAILON (Taquirari)
09. KOLO KOLITO (Carnaval)
10. ILLIMANI (Tango)

●今のところ、ベスト盤という形でしか音源のデジタル化はされていない。LP盤を入手する機会があればまよわず、入手されたい。

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