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2010-06-20 Sun 23:12
![]() ラディオ・キハーダ Radiokijada はペルー人とスイス人からなるペルー・クリオージョ音楽のユニットだ。※1 スイス出身のクリストフ・H・ミューラーは、タンゴとエレクトロニカの融合で有名なゴタン・プロジェクトの一員。今度はペルー音楽に手を出そうというワケ。 「エレクトロニカとムシカ・クリオージャの融合?それノーバリマじゃん!」という声も聞こえてきそうだ。 そのとおり、同じである。以上。 なんていってたら、連載始まって以来最短記録なのだが、そんなわけない。いや、それはそれで面白いか。いやいやいや。 確かにこのユニットの立ち位置は、前回紹介したノーバリマ Novarima に一見似ている。だが、彼らのアルバムに耳を傾けてみたまえ。サウンドはおろか、思想というか、立脚点が全く違うことに気づくだろう。なぬ。わからない。 ただムシカ・クリオージャとエレクトロニカをミクスチュアしたナンバーをひたすら並べたノーバリマに対し、ラディオ・キハーダはアフロ・ペルアーノ魅力をできうる限りナマの形で世界に広めようという強い意志が伺えるのだ。実はノーバリマを先日紹介したのは、このラディオ・キハーダと比較したかったからなのだ。え、じゃあ、前回描いた内容は嘘だったのかって。いや、嘘じゃないけれど。 ダブ・リミックスは最小限に抑え、原形を壊すことなく、自分たちなりの「再現」を試みる。クラシックやジャズ、ロックにもそれぞれ様々なカタチ、スタイルがあるように、ムシカ・アフロ・ペルアーナにも様々なスタイルがあるのだ。それらバラエティに富んだこの音楽を「世界に広める」という決意をテーマにしたコンセプトアルバムなのだ。 ●アルバムを通して見えてくる「歴史」 ロバのあごの骨、キハーダ・デ・ブーロというもっとも原始的なアフロ系楽器のソロから演奏は始まる。いわばこのアルバムの「宣言」だ(M-1)。 かなりエレクトロなナンバー「Quema!」は、奴隷時代の踊りに起源を発するアルカトラス(M-4)。女性のお尻の紙片に火をつけ、これを腰を振って消すというセクシャルなコメディタッチダンスなのだが、最後に火が消えなくなったのか、「火!火!火!」「水!水!水!」。あわてて水に飛びこむ音。海の波音をききながら海の向こうにいるアフリカの女神へ「青い海よ、青い空よ、ヨルバの女神アセス・イェマヤよ」とだけ呼びかける(M-5)。 そして、アフリカへの神とアフリカの大地に捧げる讃歌(M-6)。 まあ、コメディタッチのダンスに深読みは無粋だが、野暮を承知で言わせてくんねえ。アルカトラスの起源は主人による奴隷遊びを反映したダンスという話もあるだけに、この辺の曲順は「奴隷時代の苦しさから募る故郷への思い」→「むしろ確認されるアイデンティティ」をも歌っているように思える。しかも、サウンド面の構成も面白い。そもそもアフリカ讃歌のこの曲自体が、ヨーロッパ起源のバルスで歌われているのだ。歌詞の中にも 母なるアフリカの大地 母なるペルーの美しさ とあるように、二つの故郷が並置され、この辺からアフロのペルー化を描き始める。 M-8のイントロでは、キハーダ、カホン、カホニータなど、ムシカ・アフロの打楽器がそろい踏んで重なっていく。CRIOLLAZZの活動でも知られるJUAN MEDRANO "COTITO"のカバーなのだが、完成された音楽は国民的カリスマ、エバ・アイジョンが90年代以降、数々リリースしたカッコよすぎるフェステホの再現に違いあるまい。アレンジ、歌い方、「エーソォッ」のかけ声。どれをとってもそっくりだ。一つの到達点であるペルーのコンテンポラリー・アフロ音楽で我々を熱狂させた後の仕掛けも凝っている。ノイズだらけのレコードから流れるサパテオ(タップやクラップなど身体を自在に使った即興で行われた緊迫感溢れる掛け合い)が聞こえてくる(M-9)。M-8のようなエバ式フェステホも一朝一夕に出来た訳ではなく、ゆったりとした懐かしの時代から、どのようなものでもパーカッションにして続いてきたのだということの示唆だろう。 そして、ランドーとサマクエッカのスラム・ラップで21世紀の最新ムシカ・ネグラを提示するのだ(M-10)。 ●アルバムを通して見えてくる「未来」 M-11のフェステホでは リマからパリへ ダカールへ ニューヨークへ 日本へ マドリッドへ モスクワへ 世界中全てへ歌う との歌詞の中、空港のアナウンスを聴きながら「世界中を飛び回るムシカ・アフロ・ペルアーノ」といった風情でフィナーレとなる。 同じようなサウンドに聞こえて途中で飽きちゃうなんてことはありえない。彼らの音楽の歴史と多様性を48分の中でまとめあげ、高らかに決意を歌い上げて終わるのだ。なんという計算されつくした気持ちよさ! ヒントはやっぱり、第三者の目だろう。 ミキ・ゴンサレスにしろ、ノーバリマにしろ、もともとペルー人の彼らにしてみれば、アフロ・ペルアーノ音楽は昔から身近にあった珍しくもなんともない音楽だ。だからこそ、現代化しようと思うあまり、曲をいじくりすぎて、むしろエレクトロニカやトランスの要素の方が強くなりすぎて原形がわからなくなってしまう。 ペルー音楽をペルー人だけでリメイクするより、むしろ外国人の目を通してリメイクする方が、この音楽の魅力を大事にするという、ちょっと皮肉な名盤だ。※2 【注】 ※1 作詞・作曲・カホン、キハーダ、トゥンバドーラ、語りなどを担当しているペルー人のロドルフォ・ムニョスと打ち込み担当のスイス人、クリストフ・H・ミューラーのコンビが基本だが、バックバンドはスサーナ・バカのバックバンドが担当するあたりは豪華。 ※2 ちなみにスイス人と言えば、ボリビア音楽のケーナの流れを変えた人物として「ロス・ハイラス」のヒルベルト・ファブレ、現在の形のケーナの成立に大きく寄与したと言われるペルーのレイモン・テブノーがいる。なんていうか、スイス人てすごいなあ。 【アルバム・データ】 <CD> "Radiokijada / nuevos sonidos afro peruanos " Wrass 233 (2009) WRASSE RECORDS (UK) 01. intro kijada 02. que lindo suena 03. manoteo en menor 04. quema! 05. interludio azul 06. vals << mima >> 07. aqua e'nieve 08. tumba y cajon 09. zapateo con ron 10. S.O.S 11. lima-paris ●日本でもライス・レコードからRICE WRR-5081「ラディオ・キハーダ / ヌエーボス・ソニードス・アフロ・ペルアーノス」として発売されている。 ![]() |
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