ロマンチックだけじゃなくて……イジマニ
2012-03-30 Fri 03:57

【 ILLIMANI / Pensando en ti ... 】(1994)

いや、前々から思っていたのだ。
どうせ紹介するなら、ヌエバス・ライセスとワンセットでご紹介しようと。

ヌエバス・ライセスなんて、つぶやきシローじゃないの。
あたしの好みはもっと熱く語ってくれる人♡
という向きのあなた。
いい男いるよ!

前回ご紹介したモテモテ系サウンドのヌエバス・ライセス。
彼らがゆったり「ささやき系」サウンドでフェロモンをまき散らしたのに対し、もっと直接的な、敢えて言えばナンパみたいな勢いで愛を語っちゃうのがイジマニ Illimani※1。あ、いや、チリのインティ・イリマニ Inti - Illimaniじゃないよ。ボリビアのイジマニ Illimaniね。

「おいおい、あのバンドがいつ名盤を」
「カルカスの呪縛から脱していないでしょ」

いや、たしかにヌエバス・ライセスと比べても、よりカルカス寄りのサウンドだ。89年のアルバム"Nuevo Amanecer"では、アルバムに針を落とした瞬間、「70年代カルカス?」と勘違いするほどだ。ありきたりのカルカス・スタイル・バンドなんじゃないの?という疑問もごもっとも。

●タイトル曲に代表される叙情性
しかし、ここで着目したいのは90年に加入したビエントス担当のハイメ・イグナシオ・ベラスケス Jaime Ignacio Velasquezの存在だ。彼の作曲したナンバー自体は私が知っている限りでもわずか2曲。”Anahi”("Paginas de Amor"(1991)所収)※2"Pensando en ti" ("Pensando en ti…"(1994)所収)のみである。ただ、彼の曲が、今回ご紹介するアルバム"Pensando en ti..." (94) の特徴を一言で言い表しているのだ。

要するに、一言で言えばひどくキャッチーなのだ。おもわず胸かきむしられるような、口ずさんでしまいそうな、そんでもって、コブシまわしたくなるような。
明らかに「バラード」なんだろうが、アレンジを変えれば歌謡曲演歌にだってなっちゃう叙情性。中島みゆき、いや石川さゆりに歌わせたら、絶対すごいだろうと変な妄想が燃える燃える。これ、「いきものがかり」とか「X JAPAN」と同じ種類のバンドじゃなかろか。

確かに、こういうのは本来、絶頂期のカルカスが得意とした分野ではある。だが、1曲の中でヌエバス・ライセスのような囁きから、カルカスのような歌い上げるキャッチーさまでが混在する様はちょっとエクスタシーもの。これはヌエバス・ライセスとはまた違う正統派モテモテ・サウンドだ。
もう一回言おう。キーワードは「キャッチー」である。

●構成がしっかりしているからこそ
もう一つ言っておこう。
なにより、ボリビアにおいてはまだCD前夜であったこの頃、アルバム構成が良く練られていたものだった。

A1曲目、形式はチュントゥンキながら力強いモテ系バラード
→2曲目、
リズミックなモレナーダ
→3曲目、さらに
リズミックにクジャワダ
→4曲目、このアルバムで一番メロディ優先の完全な
モテ系サウンド
→5曲目、カルージョで脱力。

B1曲目、タイトル曲、燃え上がる
モテ系
→2曲目、ラパス市民なら知らぬものはいない古典的タンゴをしっとりと現代的にアレンジ
→3曲目、
リズミックで力強いシクーリ、カッコいい
→4曲目、ボリビア国民大好きなリズム、クエッカ
→5曲目、最後はあえて田舎臭いカランペアード


先ほどはモテ系バラードのバンドみたいな言い方をしたが、実はモテ系バラード自体はそんなに多い訳じゃない。アルバム全10曲中、3曲のみなのだ。

LP1枚を聴いているうちに単調にならないように、モテ系バラードの後にリズム系の曲を2曲続ける。今度はリズム系に飽きそうになったところにメロディ最優先の曲をいれる……など、実に聴き手のことをよく考えた構成なのだ。

こうした工夫があって初めて、主要曲の3曲も際立って素晴らしい曲に聞こえてくるし、また、ボリビア音楽に全く興味のない人もクジャワダやカルージョの魅力にも気付く訳だ。

これは、モテるはず。


●"Pensando en ti" 

【注】
※1
私、実は彼らのオリジナル・アルバムのLPは2枚しか持っていないのだ。"NUEVO AMANECER"(89)と"PENSANDO EN TI…"以外のアルバムをお持ちで「売りたし」という方、是非高価で購入致します!どうかご連絡ください! あ、インティ・イジマニ Inti - Illimaniじゃないよ。
※2
このアルバムまでトップボーカルとして参加していたMarco Antonio Naciffはこの後、ソロ活動を始めるが、2007年に交通事故で亡くなった。Youtubeにやたらアップされているニューヴァージョンの"Anahi"は彼に捧げられている。


【アルバム・データ】
<LP>
"ILLIMANI/ Pensando en ti… " (1994)
CL42 MCB(Bolivia)

01. Como Olvidare (chuntunqui)
02. Baila Morenada (morenada)
03. Te Esperare (kullaguada)
04. Asi (cancion - tonada)
05. En Vano (kaluyo)
06. Pensando en ti (tonada - sikuri)
07. Illimani (tango)
08. Aymarita (Sikuri - Kairani)
09. A mi Chaco Boliviano (cueca tarijen~a)
10. Wawitay (huayn~o kalampeado)

●恐らくCD化されていない。

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コメント
-私が気になってるのは…-
http://youtu.be/wRAJDxsqyVU
これは…セット過ぎますか。PAのバランスがアレですが。

実はEx Nuevas Raicesは、このIllimaniとの「90年代フォルクローレ」ジョイント企画コンサートが最初だったと思われるのですが(上のビデオは当時のインタビュー)、なんだか両方参加してる人が…そしてよく見るとOllantay、Anata Bolivia、Sin Fronteras、Sajama等、色んなところに同じ顔が。更にはRumillajtaにも参加していたとかいう話ですが、Salomon Rios氏って何者でしょう?

普段の話し声もあの超低音で(ご紹介の曲の、冒頭の語りそのまま)、他人がそれを真似して遊んでるのをニコニコ黙って見ている不思議な感じの人でしたが、、、気になります。(実際会った時「ヒロ(秋元氏)は元気?」とか聞かれたけど、あんまり話はしてないのです…)
2012-04-01 Sun 10:57 | URL | ゆな #f10z4yi6[ 内容変更]
-実は私も気になっていました……-
salomon Riosに関しては、実は私も気になっていました。気になっただけで、全くどのような人なのかは知らないのですが。

私が追っかけられたのは、Nuevas raices、Ollantay、Anata Boliviaまでだったんですが、何とSin Fronteras、Rumillajtaにまで所属していたとは("Sajama"はそもそも今日ゆなさんに教えていただいてYoutubeの動画を見るまで、その存在を知らなかった)。

私は個人的にSin Fronterasのアルバム、ipodに入れて持ち歩くほど好きなのですが、ギターとコーラスのみの印象の強いグループに彼が参加していることに驚きました。

>他人がそれを真似して遊んでるのを
>ニコニコ黙って見ている不思議な感じの人

という記述だけでも好感を持てちゃうんですが、それにしてもなかなか一本筋の通った(?)経歴ですね。
2012-04-01 Sun 16:03 | URL | もち #-[ 内容変更]
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