ペルーでモッシュッシュ♡ ……フロール・デ・ロト
2015-02-07 Sat 00:29

【Flor de loto / IMPERIO DE CRISTAL】(2011)

BABYMETAL 「LEGEND "2015" 〜新春キツネ祭り〜」(@さいたまスーパーアリーナ 2015年1月10日)に行ってきた。
指定席だ。本当はかぶりつきで「ダメジャンプ」をしたかった。
でも正面アリーナ席はオールスタンディングの「モッシュッシュ・ピット」
この厳冬のさなか、みんな黒い半袖Tシャツで開場を待つガチムチ連中。


↑英国「METALHUMMER」誌のさいたまスーパーアリーナ・ライヴレポート

絶対「圧縮」ありそうだし、「モッシュ」は発生するだろうし。
「ウォール・オブ・デス」だって始まりかねないし、「リフト」「ダイブ」※1、2だってあるかもだし。
私みたいな貧相なオヤジじゃ死んじゃう。
オヤジ、ダメ、ゼッタイ。

そもそも開演前のアナウンスがすごいぜ。
モッシュなどの危険行為は禁止とさせていただきます。(略)また、モッシュッシュ・ピットでは……(略)」
何じゃそりゃ。

90年代、イングヴェイ・マルムスティーンの『エレキギターのための協奏曲』やセパルトゥラの『アゲインスト』あたりを最後にメタルから離れてしまった私だが、昨年1年間はBABYMETALのおかげでマイブーム復活。メロスピ、メロディックブラックメタルといったサウンドにハマったのなんの。ソナタ・アークティカ、ドラゴン・フォース、チルドレン・オブ・ボドム、ソニック……。とりわけ、台湾のメロディックブラックメタル、ソニックの『タカサゴ・アーミー』はスゴイ。クルマで通勤中、ボエ~って大音量のデスボイス聴きながら、思わず落涙。名盤だ。

かように私にとって2014年は刺激に満ちた毎日だったわけだ。
とりわけ、ここのところ最もヘビロテになっていたアルバムがフロール・デ・ロト Flor de Loto の5th『Imperio de Cristal』※3
ツーバスドカドカのスピードチューンを冒頭に配するアルバム展開は、いかにもメタルなお約束。
もっとも、メタルはメタルでもかなり特殊な音なのだ。オンリーワンなサウンド。
ガチなメタルファンにとっては入りにくいかもしれないが、一度ハマるととことんハマる音なのだ。

●よくあるフォークメタルではない
一応、フロール・デ・ロトはフォークメタル(民族音楽と融合したメタル)の一端に属するとされている。

ただ、フォークメタルの多くは、「異なるジャンルを一つのサウンドに融合した」というよりは、実際のところ一つのバンドにメタルとフォークの「二つの顔」が混在しているというニュアンスのものが多い。
味付けとしてサビに民族楽器を乗せるとか、イントロや間奏としてフォークを使うとか。
メロディック・デスメタルとケルト音楽をミクスチュアしたスイスの エルヴェイティEluveitie などがその好例だ。※4もちろん、アンデス諸国においてもそうした事例は例外ではない。

こういったバンドが本当に異なるジャンルの「融合」を実現できていただろうか。実際、その多くが「メタルにアンデス楽器を加えてみよう」という単なる思い付きの域を出ないありがちな仕上がりに終っているような気がする。安易なのだ。

これに対する解答として有効な方法論を提示したのが、彼らフロール・デ・ロトなのである。

●ヒントは諸星大二郎
彼らの方法論って何? そこで、アルバム全体を通して聴いてみることにしよう。
これってメタル?
いや、『BURRN ! 』の愛読者あたりなら、「こんなん、メタルと違うわ」なんて言うこと間違いなし。
じゃあ、フォルクローレ?
いや、ファンならずとも「こんなんフォルクローレと違うわ」っていうにきまっている。

あえて言えば、彼ら専用のジャンル名がほしくなるオリジナルの音なのである。
そう、「融合」といいつつ両者が並立したままの凡百のバンドとは、根本的に違う。
二つの要素が複雑に絡み合って分かちがたく聴こえるこのサウンドは、一聴すれば、すぐに彼らの音だと分かるのだ。
金属的なメタルサウンドとフルートやケーナなどの有機的(オーガニック)な息吹が不可分に混じり合う。

まるで諸星大二郎の名作短編「生物都市」(1974)である。



金属などの無機物と生物。
有史以来、混じり合うことのなかった二つの物質。
しかし、ある宇宙船の地球帰還が契機となり、この二つが続々と融合してしまう。
人類を無機物に融合させる原因となったのは、無機物を取り込む異星生物との接触感染だった。


……この「生物都市」にフロール・デ・ロトを重ね合わせると、このバンドの本質がよく見えてくる。

①金属           生物 ←(バラバラ)
②金属 ― 異星生物 ― 生物 ←(合  体)

では、フロール・デ・ロトのサウンドで、この異星生物 ーー つまり接着剤の役割を果たしているものは何なのか。

●構成からアレンジまでを統一するプログレ主義
メタル(金属)とフォルクローレ(生物)を融合する異星生物の役割を担っているのは、ずばり、プログレッシブ・ロックの要素である。
彼らのサウンドは一聴すると、確かにフルートをメインに据えるフォークメタルのように感じる。
ところが、フォークメタルにしては変拍子転調複雑な曲構成を持つ曲が意外なほど多い。
実際、彼らの原点たる1st 『Flor de loto』 までさかのぼって聴くと、メタルの要素は感じられず、ほとんど「フォルクローレ楽器によるプログレ」といった雰囲気なのだ。
この時分には、万人が認める「プログレ」バンドだったのである。※5 
その後、リリースを重ねる毎に、メタル要素が濃くなっていくのだ。

当初は「フォーク・プログレ」
6枚目現在では「プログレッシブ・メタル」……とサウンドの比重が変化してきたのだ。

さすがにプログレバンドを自称するだけはある。メタル作品としてはよく曲想が練られ、アレンジも周到。一般的なメタルなら主役はやはりギターサウンド(フロール・デ・ロトでも、近年ギターがメインになりつつあるが)。しかし、このバンドではフルート(曲によってケーナやサンポーニャ)がぐいぐいフロントに出てくる。激しいつば飛ばしフルートがメインソロもとれば、リフも刻む。ギターと同様に主役を張るのだ。 ボーカルもちっとも普通のメタルらしくない。スピメロっぽい超絶ハイトーンでもなし、ブラックメタルのような凶悪デスボイスでもなし。アルゼンチンのオルタナティブ・ロックかボリビアのネオ・フォルクローレのごとき、コーラスを伴った地声ボーカルであえて勝負。

こうしたアコースティック要素の組み合わせがプログレッシブ・ロック特有の計算のなかに組み込まれているからこそ、彼らのサウンドは一種独特の世界観を呈するのである。
ケーナやサンポーニャといった楽器は、使い方を誤れば、バンドサウンド全体を毒にも薬にもならないような音楽にしがち。
これらの楽器に存在意義を与えて強みにしてしまう力技は相当なものである。

●名盤は聴き手の姿勢一つで
最後に、6枚の中からこのアルバムを「名盤」と選んだ理由を述べておこう。
これも先ほどあげた3つの要素(メタル/フォーク/プログレ)にヒントがある。
本当はどのアルバムを選んでもよかった。※6

「メタル/フォーク/プログレが好きだから聴いてみたい!」といっても、3つの要素のどこを重視したいかは人によりまちまち。
フロール・デ・ロトのアルバムは、作品によりこの三角形のバランスが変わってくる。
トライアングルの頂点をどうとるかという聴き手の姿勢ひとつで、どのアルバムも名盤になりうる気がする。

フォルクローレ要素を重視したプログレの妙味と完成度を味わいたい向きには『Madre Tierra』(2007)。この中の「La Ley de la Vida」なんて曲は、ボリビアあたりの伝承曲なんじゃないかと思うくらい味わい深い。メタルとしての完成度を追求したい向きには最新盤『Nuevo Mesias』(2014)。1曲1曲の完成度はさらに研ぎ澄まされ、それでいてメタルの渦中に違和感なく「カチャルパヤ」のフレーズをブッコんできたりしてプログレにしちゃうその凄さ。

ただ、私にとっては、今回取り上げた2011年の『Imperio de Cristal』が究極のマスターピースなのだ。
ゴリゴリのフォークメタルかと思わせるオープニングから一転、中盤ではまさかの二部構成シンフォ大曲
もちろん、ラストも10分ほどの大曲で締めるというコンセプチュアルな作り。
一つのテーマが形を変え、アルバムを通して繰り返し登場するという手法にいたっては、まるで交響曲。
これこそ真のシンフォだ。傑作以外の何物でもない。
ぜひとも、ご一聴いただきたい。


● Imperio de cristal


●El jardin seceto
【注】
1 
「圧縮」はライブ会場で観客がステージ方向へ殺到して、押しつぶされちゃうこと。「モッシュ」は観客が集団で他人に押し合いへし合いアタックすること。皆で輪になってぐるぐる回り始めちゃうのが「サークル」とか「ストーム」、戦国合戦みたいに左右に分かれてぶつかり合うのは「ウォール・オブ・デス」。海外の映像を見ていると誰かに殴られたのか血まみれになっている人とかいてコワい。「リフト」は誰かを肩の上に持ち上げちゃうこと。コワい。「ダイブ」は人波に飛び込んじゃうこと。コワい。


BABYMETALではモッシュを「仲良く楽しいおしくら饅頭」とし、「モッシュッシュ」と呼んでいるらしい。ウッシッシ。不覚。

3 
フロール・デ・ロトは「蓮の花」という意味を持つペルーのバンド。Facebookのオフィシャル情報では自己のジャンルを「プログレッシヴHR/フュージョン」と表現している。実はフルート、ケーナ、サンポーニャ、チャランゴ、カホンやボンボなどを操るメンバーはフニオール・パコラJunior Pacora一人だけ。ケーナとチャランゴなどがかぶるナンバーは彼によるマルチ録音となっている。

4 
エルヴェイティはブズーキ、バグパイプ、ハーディ・ガーディやフィドルなどを担当するメンバーが半数を占めるため、1枚まるっとケルト音楽のアルバムもリリースしている。アルバムの中においても、ハードなブラックメタルナンバーの曲間に生粋のケルトミュージックを配置し、バラードの役割を与えている。

5 
プログッレシブ・ロック専門店ガーデンシェッドのオンラインショップでは、1stアルバム『Flor de Loto』(2005)のときから、リストアップされていた(現在はi Tunes Storeでダウンロード販売を利用できる)。


2012年の5st『Volver A Nacer』だけちょっと異色。このアルバムは1~4stアルバムからの再演ベスト盤なのだ。だから、選曲順にこだわるわけでもないし、全体を貫くコンセプトが見当るわけでもない。1枚目としてはあまりお勧めしない。


【アルバム・データ】
<CD>
"Flor de loto / IMPERIO DE CRISTAL"(2011)
Mylodon Records MyloCD089 (Chile)

01. IMPERIO DE CRISTAL
02. MOSOJ PACHA (Nuevo Mundo)
03. SOMBRAS EN LA OSCURIDAD
04. EL JARDIN SECRETO
05. MAR AMARGO PT1 Y 2
06. SUENOS DIURNOS
07. LABERINTO
08. DESPERTAR
09. HASTA EL FINAL

●私が持っているのはチリのMylodon Records盤だが、日本のAmazonで取り扱っているのはフランスのMusea Records盤、アメリカのAmazonではアルゼンチンのPulmonar Recordables盤など他にも各国でリリースされているらしい。

●iTunes Storeで、MP3ダウンロード販売もあり。


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